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協和キリン(国内10位):クリースビータの成功で海外売上高比率50%へ

オーファンドラッグの開発も強化

キリンホールディングス傘下だったキリンファーマと協和発酵が経営統合し、キリンの連結子会社として誕生した「協和発酵キリン」」は2019年に海外でのブランド力向上を目的に社名変更を行い、現在の協和キリンとなりました。

キリンファーマの医薬品事業の特色は、副作用が少ないことから「次世代の医療」と期待の高い細胞医療を得意としており、多発性骨髄腫についての臨床検査を他社に先駆けて開始するなどこの分野におけるリーディングカンパニーでした。2008年1月、同社は同じく抗体薬品技術などを中心としたバイオ技術に長けた協和発酵を買収し「協和発酵キリン」となったのです。

協和キリンの国内・海外の売上高比率

協和キリンとなった現在は、「がん」「腎臓」「中枢神経」「免疫疾患」を研究・開発の重要領域と位置付けており、それらを対象とした「抗体医薬品の開発」に注力しています。人間の免疫機能を活用した「抗体医薬品」は、関節リウマチをはじめとする免疫系の疾患や、各種がんの治療薬として研究開発や製品化が進んでいます。そんななか自社創製の医薬品として業績拡大に大きく貢献しているのが、2018年に欧米、2019年に日本国内で発売された抗FGF23抗体「クリースビータ(一般名:ブロスマブ)」です。

協和キリンの営業利益率の推移

2020年の協和発酵の売り上げは3,522億円。海外では「クリースビータ」と並んで「グローバル戦略3品」と位置付けられている、抗がん剤「ポテリジオ」とパーキンソン病治療薬「ノウリアスト」も好調で、海外売上高比率が約50%を占めるに至りました。

今後、「クリースビータ」は適応拡大と販売国の拡大による患者数の増加が見込まれるため、国内外で売り上げを大きく伸ばすのは間違いなく、協和キリンの創業初となるブロックバスター(売り上げ1,000億円を超える医薬品)への成長が期待されています。

好調な海外市場での伸長とは反対に、クリースビータを除く国内の製品ラインナップは陰りが見え始めています。かつて協和キリンの主力製品だった腎性貧血治療薬「ネスプ」は特許切れを迎えており、先行品のバイオAG(オーソライズドジェネリック)を投入したものの、競合のキッセイ薬品工業やマイランEPDのバイオシミラー(バイオ後続品)が売り上げを伸ばしています。このため2020年は「ネスプ」とAGの合計で40%近い減収となりました。

抗がん剤の副作用(発熱性好中球減少)を抑制する「ジーラスタ」など成長が期待できる製品もありますが、大黒柱だったネスプを補うには至っていません。

協和キリンの主力製品(売上順)
医薬品名 対象領域 売上高(21年3月期:単位は億円)
クリースビータ FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症 885
ジーラスタ (血液成分製剤) 294
ネスプ(AGを含む) 慢性腎臓病 263
ポテリジオ 成人T細胞白血病(ATL) 153
リツキシマブBS「KHK」 がん 112
パタノール アレルギー性結膜炎 107
オルケディア 二次性副甲状腺機能亢進症 99
ノウリアスト パーキンソン病 87
アレロック アレルギー性疾患 80

国内外のメガファーマが推進しているM&Aについては、2011年、がん領域に強いイギリスの製薬企業「プロストラカン(ProStrakan)」を買収。この買収によりがん性疼痛治療薬「アブストラル」、制吐剤「サンキューソ」などの製品を獲得しただけでなく、欧米における販売網の構築の足掛かりを得ました。また2014年には鼻腔スプレー型の疼痛緩和薬「ペクフェント(PecFent)」など疼痛やオンコロジー領域に有力製品、特許を保有する新薬開発企業「アルキメデス(Archimedes Pharma Limited:イギリス)」を買収しています。

2022年、協和キリンは買収2社から獲得した「アブストラル」や「ペクフェント」などの13品目をドイツの疼痛領域の製薬企業「グリューネンタール」に知的財産権とともに譲渡しロイヤルティー収入を受け取る契約を結んだことを発表しました。

10年前の協和キリン:最大製品である腎性貧血治療薬「ネスプ」の売上が大幅増加

2011年度は国内市場で同社の最大製品となっている腎性貧血治療薬「ネスプ」の売上が、147億円増の564億円と大幅伸長となりました。ネスプは1~2週間に1回の投与を可能にした持続性ESA(赤血球増加因子刺激)製剤です。1週間に3回投与が必要な従来品は特許満了となり、バイオシミラー製品が発売されています。

透析関連では他にも「維持透析下における二次性甲状腺機能亢進症」を適応症として2008年1月に発売された「レグパラ」が好調です。発売4年目の2011年度は前年比21%増加して115億円となりました。

2011年は前年の猛暑の影響で花粉飛散量が全国的に多かったため、抗アレルギー薬「アレロック」と「パタノール」の売上が大幅増加となりましたが、2012年12月には多数の後発品が発売されています。そのほかでは潰瘍性大腸炎治療薬「アサコール」、経皮吸収型の持続性がん疼痛治療薬「フェントステープ」も増収基調となっています。

2012年5月にはポテリジェント技術を応用した世界初の抗体医薬品「ポテリジオ」を「再発または難治性のCCR4陽性」の成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)を適応症として発売しました。同時発売のコンパニオン診断薬「ポテリジオテスト」の臨床検査費用10万円も保険適用となっています。

海外では同社から日本とアジア以外における開発・販売権を獲得した米バイオテクノロジー会社メドイミューンがアメリカでの開発を進めています。日本国内では注射剤として2015年の承認申請を目指しています。国内に約100万人いるとされる気管支喘息の患者ですが、根本的な治療法が未だ確立されていないため、新薬に対する期待は高まっています。

同社が将来有望として、ターゲットを絞り込んで臨床試験を進めているのはがん・血液領域で12品目、腎臓や免疫・アレルギーなどの領域で10品目の計23品目となっています。

希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の開発も強化

協和発酵キリンは再発性または難治性皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)などをはじめとする希少疾病を対象とした医薬品(オーファンドラッグ)の開発にも力を入れいています。

オーファンドラッグは国内患者数が5万人未満であって、難病など重篤な疾病を対象とするとともに、代替する適切な医薬品や治療方法がなく、医療上の必要性が高いものを指しています。

しかし、民間企業が中心となって行う医薬品の開発はあくまでも利益を出すことが大前提となっています。このため、患者数の少ない疾病の医薬品の研究開発は、市場性が低い、開発の難航が予想されるなどの理由でおろそかになる傾向にあります。

そこでオーファンドラッグの研究開発を促進するための新薬開発補助金制度が開始され、1993年よりオーファンドラッグの指定制度が発足し、研究開発への補助金の交付、税制上の特例、優先審査、再審査機関の延長などの優遇措置が講じられるようになりました。

希少性ということで、製薬企業の研究開発へのインセンティブが重要となりますが、多くの適応を取得して大型化を遂げるオーファンドラッグも登場してきています。ファイザーやグラクソスミスクラインなどのメガファーマも本格参戦し、世界市場で3兆円とも言われるオーファンドラッグ市場で国内の製薬企業が存在感を示すためには、今後、国からのより一層の援助が必要とされています。