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田辺三菱製薬(国内8位):大型新薬の開発に至らず、国内の売上高が全体の80%越え

ジェネリックの販売事業にも本格参入

大阪に本社を置く田辺製薬と三菱化学グループの製薬事業を担っていた三菱ウェルファーマが、2007年に合併して誕生したのが田辺三菱製薬です。

前身である三菱ウェルファーマは三菱化学グループの製薬企業や他社との段階的な合併を繰りかえしながら拡大してきました。一方、カルシウム拮抗薬「ヘルベッサー」が世界100カ国以上で発売され、一時期は「循環器の田辺」といわれた田辺製薬ですが、その後は新薬の開発に恵まれなかったため、三菱との合併に至りました。

田辺三菱製薬は2019年12月までは上場会社として、三菱ケミカルホールディングスの総合化学企業である三菱ケミカルの製薬部門に位置づけられていましたが、2020年1月に上場廃止となり同グループの完全子会社となりました。

田辺三菱製薬は、そのネームバリューと規模の割には世界的な大型新薬の開発には至っておらず、日本国内での売上高が全体の約80%を占めています(2021年)。今後は画期的な新薬の研究・開発に力を入れるとともに海外市場への進出が拡大のカギとなるでしょう。

田辺三菱製薬の国内・海外の売上高比率

2008年には田辺製薬販売株式会社を設立し、大手医薬品企業としては珍しく、日本国内でのジェネリック医薬品の販売事業にも力を入れていましたが、2017年に同社の全株式を二プロに譲渡し「ニプロESファーマ」となりました。

2019年年2月、多発性硬化症治療薬「ジレニア」のロイヤルティ支払いに関し、「一部に支払い義務がない」として海外販売を担うスイスの製薬大手ノバルティスが係争を起こし、田辺三菱製薬は国際商業会議所に仲裁を申し立てる事態となりました。ジレニアは世界全体で年間3,500億円を売り上げるブロックバスターで、田辺三菱側が受け取るはずだった2018年のロイヤリティは577億円。2021年現在も結論は出ておらず、既に約2,000億円のキャッシュインが失われている計算になります。

さらに2017年に買収したイスラエルの製薬企業ニューロダームで獲得したパーキンソン病治療の開発が当初の計画よりも遅れたため、2020年は585億円の赤字を計上しました。

2022年現在の田辺三菱製薬の最大の主力製品は「レミケード(関節リウマチ治療薬)」となっており、続いてその後継品である「シンポニー」、「ステラーラ(潰瘍性大腸炎ほか)」、難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)に承認された「ラジカヴァ(日本名:ラジカット)」などが挙げられます。大黒柱の「レミケード」は、アッヴィの「ヒュミラ」、バイオシミラー(BS:バイオ後続品)の登場によって売上は減少傾向にあります。

田辺三菱製薬の主力製品(売上順)
医薬品名 対象領域 売上高(21年3月期:単位は億円)
レミケード 関節リウマチ 454
シンポニー 関節リウマチ 423
ステラーラ 潰瘍性大腸炎 322
ラジカヴァ
(日本国内:ラジカット)
ALS(筋萎縮性側索硬化症) 220
ロイヤリティ収入等 159
レクサプロ うつ病 153
テネリア 糖尿病 151
イルベタン類 高血圧 33
インフルエンザワクチン インフルエンザ 144
テトラビック
(4種混合ワクチン)
ポリオ、百日せき、ジフテリア、破傷風 109

田辺三菱製薬はヘルスケア(OTC医薬品)事業も展開しています

田辺三菱製薬は一般用医薬品の事業(事業別売上収益比率は約1%)も手掛けており、「タナベ胃腸薬」、「タリオン(鼻炎薬)」、「コート(外皮用薬)」、「アスパラ(点眼薬)」、「オキナゾール(膣カンジダ治療薬)」などのブランド展開を行っています。

上の動画は、芳根京子さん(女優)を起用したアレルギー専用鼻炎薬「タリオンAR」のCM(2023年バージョン)です。「タリオンAR」は医療機関で処方される「タリオン」と同じ有効成分(ベポタスチン)を配合したスイッチOTCです。スイッチOTCとは、医療機関で処方される医薬品のなかで、副作用が少ないものをドラッグストアで購入できる市販薬(OTC医薬品)に転用したものを指します。

10年前の田辺三菱製薬:レミケードの売上は続伸も、従来の主力商品は減少傾向

2012年3月期の連結売上高は4,070億円で、その87%を占める国内医療用医薬品(3,550億円)は前年比2%の減少となりました。主力製品である関節リウマチ治療薬「レミケード」は、2009年7月に承認された「投与量の増量・投与間間隔の短縮」による増収効果はほぼ落ち着いたものの、乾癬、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎の効能追加、クローン病での増量が相次いで承認され、さらに市場が拡大しました。

関節リウマチに対する抗TNF治療の普及率が40%を超えているアメリカに対し、日本は依然として20%にも至っていません。日本では治療を受けているリウマチ患者50万人のうち、抗TNF薬剤の投与患者は8万人、そのうちレミケードは3万人に投与されていますが、市場拡大の余地は大きく残っています。

そのほか、関節リウマチ治療薬「シンポニー」、不整脈治療薬「メインテート」、C型慢性肝炎治療薬「テラビック」、抗うつ薬「レクサプロ」、多発性硬化症治療薬「イムセラ」などが増収となりましたが、「レミケード」に次ぐ最大製品の脳保護薬「ラジカット」は280億円前後の売上で安定を続けていましたが、2011年に特許満了で後発品が参入し売上は22%減の220億円となり、さらに2012年4月の薬価改定で18%の薬価引き下げを受けました。また、抗血小板薬「アンプラーグ」、高血圧症治療薬「タナトリル」と「ヘルベッサー」、肝疾患治療薬「ウルソ」など、長期収載品となったかつての主力製品は一段と売上が減少しました。

「テラビック」、「レクサプロ」、「イムセラ」など2011年に発売された新約は長期処方制限や全例登録などの製薬から合計売上は35億円にとどまっていますが、発売2年目以降の伸長が期待されます。アレルギー性疾患治療薬「タリオン」、糖尿病血治療薬「テネリア」も発売され、主力製品の世代交代が期待されています。

海外では、ノバルティスファーマに導出(ライセンスアウト)した多発性硬化症治療薬「ジレニア(国内製品名:イムセラ)」の初年度売上が約5億ドルになり、田辺三菱製薬の技術導出契約金の増加額のほとんどはジレニア関連となっています。SGLT-2阻害剤の糖尿簿湯治療薬「カナグリフロジン」は導出先のジョンソン・アンド・ジョンソンが2012年5月に米国で承認申請を行っています。海外からの技術料収入は今後一段と拡大すると予想されます。