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エーザイ(国内6位):レンビマ(抗がん剤)の躍進でアリセプトの特許切れを克服

Eisaiは売上高が7,000億円を超える大手製薬企業

「ヒューマン・ヘルスケア 」のCMスローガンで有名なエーザイは同族企業ながら、企業統治の透明化には非常に積極的で、2004年に経営を監督する取締役会の過半数を社外取締役にしなければならない「委員会等設置会社」に移行しています。

エーザイは2003年に動物薬事業を明治製菓に売却したのをはじめ、食品・化学事業部や機械事業部を分社化しており、現在は医薬品事業にほぼ特化して事業活動を展開しています。

海外進出にも積極的な同社は80年代にアメリカとヨーロッパへ進出を果たしており、海外売上高比率の高い(60%)製薬会社となっています。この海外売上高を支えてきた医薬品が、アルツハイマー型認知症治療薬「アリセプト」と胃酸分泌を抑制して消化性潰瘍を治療する「パリエット」です。

海外でもその評価が高いエーザイですが、自社開発品の継続が難しいこともあり、2007年にはがん治療の抗体医薬を研究するモルフォテック社を買収しました。またその翌年には、当期純利益を赤字にしながらも、がん領域に強いアメリカのバイオ企業であるMGIファーマを買収してその研究成果を獲得しています。

エーザイの国内・海外の売上高比率

2015年、エーザイは事業活動をオンコロジー領域と神経疾患領域に集中させるため、大胆な組織再編を行いました。具体的には、「アリセプト」と共にエーザイの業績を支えてきた「パリエット」を含む消化器領域の事業を分社化しました。資本金の6割を出資する形で味の素と合弁会社「EAファーマ」を設立し子会社としました。また診断薬を扱う「エーディア」を積水化学に、食品・化学事業の子会社「エーザイフード・ケミカル」も三菱化学フーズにそれぞれ売却。また医薬品製造・販売の子会社「サンノーバ」をアルフレッサホールディングスに譲渡しました。

2019年にはジェネリック医薬品の事業を展開していたエルメッドエーザイ(エーザイの100%子会社)を「ジェネリックの大手御三家」の一つである日医工に売却しました。エルメッドエーザイは製品を自社製造せずに他社に委託していたため、生産コストがかさんでいたことに加え、薬価制度の見直し、取扱品目数などの要素が重なり近年は市場で苦戦していました。

グローバル展開でピーク時には約3,200億円の売り上げを記録した認知症治療薬「アリセプト(一般名ドネペジル)」が2010年に特許が切れた後、いわゆる「パテントクリフ(特許の崖)」に長らく陥っていたエーザイですが、2017年に11年ぶりの2ケタの増収増益となり、売上も6,000億円(2017年)→6,400億円(2018年)→6,900億円(2019年)と着実に伸びています。

エーザイの営業利益率の推移

2020年の売り上げは、新型コロナや薬価改定、メルクとの提携によるマイルストーン収入(新薬開発の進捗状況に併せて生じる、新規化合物の発明企業への支払金)の大幅減などが重なり6,400億円と前年から落ち込みました。しかし、抗がん剤「レンビマ」は投与患者数の増加に伴い売上も1,339億円(前年比19.7%増)と伸長し、抗てんかん薬の「:フィコンパ」、グローバル製品の主力である抗がん剤「ハラヴェン」も安定した売上で推移しています。

レンビマは承認から4年でブロックバスター(売上1,000億円越えの医薬品)に成長し、ピーク時の売上高5,000億円~と予想されており、今後が期待されています。特に世界で肝細胞がんの罹患率が最も高い中国で売上が伸びています。従来、中国市場でのエーザイの主力は「アリセプト」や「メチコバール」などの特許切れの製品でしたが、レンビマの好調に後押しされたエーザイは、日本の製薬企業のなかで最も中国での売上高が高い企業(850億円:2020年)となっています。

またバイオジェンの共同開発しFDA(アメリカ食品医薬品局)に迅速承認された、アルツハイマー病(AD)の治療薬「レケンビ(レカネマブ)」にもブロックバスターへの期待がかかりますが、同じくバイオジェンと共同開発した「アデュヘルム(アデュカヌマブ)」が有効性と年間コストに対して医師や専門家から疑問の声が上がり普及しなかった前例があるため、まだ未知数の部分もあります。

エーザイの主力製品(売上順)
医薬品名 対象領域 売上高(21年3月期:単位は億円)
レンビマ がん 1.339
ヒュミラ 関節リウマチ 520
ハラヴェン がん 376
メチコバール 末梢神経障害 342
フィコンパ てんかん 267
アリセプト アルツハイマー型認知症 263
イノベロン てんかん 220
リリカ 疼痛 215
ルネスタ 不眠症 139

エーザイが社運を賭けるアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」の解説動画

アルツハイマー病の進行を遅らせる画期的な新薬としてエーザイがアメリカで先行販売している「レカネマブ(レケンビ)」の実力について、アルツハイマー病の仕組み、レカネマブの作用機序、治験データを交えながら解説した、テレビ東京のニュース番組「日経プラス9」の動画(公式チャンネル)です。

10年前のエーザイ:特許終了でアリセプトの売上が大幅減少も、次期主力品が好調

2012年3月期の連結売上高は前年比12%減の6,480億円となりました。同社の最大製品である「アリセプト」は2010年10月に特許終了となった影響が大きく、世界売上は1,400億円と半減しました。特に米国では売上が大場減少が続いているため、同社の売上に占める米国市場の比率が39%から24%に低下しました。一方、国内におけるアリセプトの売上は、「高度のアルツハイマー型認知症」と高用量10mg、新剤形の内服ゼリー、ドライシロップ製剤の追加承認といったライフサイクル・マネジメントが功を奏して、3%増加の1,080億円となりました。

プロトンポンプ阻害剤(PPI)の抗潰瘍薬「パリエット」は後発品参入の影響を受けることなく堅調に推移しており、1%増加の620億円を記録しました。2010年6月に承認された「逆流性食堂塩に対する1日2回投与の用法・容量追加」の貢献が大きいとみられます。同市場は最大製品である武田薬品の「タケプロン」をはじめ、2011年に第一三共が同系統のPPI「ネキシウム」の販売を開始しており、競争が激化しています。

主力製品のアリセプトとパリエットの成長は限界に達していますが、アボットとのコ・プロモーション製品である抗TNF抗体の関節リウマチ治療薬「ヒュミラ」が54%蔵して200億円を超えました。また、ファイザーとのコ・プロモーション製品である神経因性疼痛治療薬「リリカ」も好調です。

エーザイは女性のがん疾患「ウーマン・オンコロジー」に代表されるアンメット・メディカル・ニーズへの新薬開発を成長戦略としていますが、自社開発の乳がん治療薬「ハラヴェン」は実質初年度の2011年から160億円に達し、がん関連製品の合計は960億円と16%増加しました。がん関連製品はほかにも制吐薬「アロキシ」、DNAメチル化阻害剤の骨髄異形成治療薬「ダコジェン」がともに増加基調を維持しています。

高血圧、コレステロール、糖尿病など循環器をはじめとする生活習慣病の治療薬が少ない点は同社の主力製品の特徴であり、開発中の新薬も同様の傾向が見られます。

グローバル市場では、米アリーナ社と提携する抗肥満治療薬「ベルビック」がFDA承認を取得、米欧20カ国で販売を計画しています。世界初のAMPA受容体拮抗剤「ペランパネル」が「12歳以上のてんかん患者の部分発作に対する併用療法」を適応症として欧州と米国で承認されました。

てんかんは精神・神経領域を代表するアンメット・メディカル・ニーズであり、ノバルティスファーマから「ルフィナマイド」を、大日本住友製薬から「ゾネグラン」を導入して欧米で抗てんかん薬の開発、販売を強化しています。

アリセプトは2011年の国内医薬品の売上で第1位、パリエットは11位となっていますが、そのほかのエーザイの製品で国内医薬品別売上のトップ100にランクインしたのは、末梢神経障害治療薬「メチコバール」が46位、関節リウマチ治療薬「ヒュミラ」の78位のみとなっており、新薬開発が課題となっています。そのためエーザイでは、新薬開発に重要な役割を果たした研究者に対して、売上高5年度分の累計売上高の0.05%を配分する特別インセンティブ制度を設け、新薬の開発促進を図っています。

オンコロジー領域では、「ハラヴェン」の局所進行性・転移生乳がんにおける「カペシタビン」を比較対象とした臨床試験がフェーズ3の段階にあり、欧米でより早期の治療法としての承認取得を目指しています。

国内市場では痙性斜頚治療薬「ナーブロック」、不眠症治療薬「ルネスタ」、関節リウマチ治療薬「ケアラム」が承認されました。