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中外製薬(国内5位):ヘムライブラ、テセントリク、ロナプリーブ等が好調

インフルエンザ特需で注目されました

主力製品である「ヘムライブラ(血友病治療薬)」、「ロナプリーブ(新型コロナ治療薬)」、「テセントリク(免疫チェックポイント阻害薬)」、「エンスプリング(視神経脊髄炎治療薬)」の売り上げが好調で、2022年は5年連続過去最高収益&創業以来初となる売上高1兆円を突破し国内5位の製薬企業となった中外製薬。時価総額では国内最大手の武田薬品工業を抜いて1位に躍り出ました。

虫害製薬は、ノバルティスと並んでスイスの2大グローバル医薬品企業であるロシュが、技術獲得と市場への参入強化を目的として2002年に買収しました。この買収により、日本国内における医療用医薬品事業は、ロシュグループの中外製薬が担うことになりました。

現在は、医療用医薬品と診断薬の2つが事業の中心となっており、日本市場においては、医療用医薬品事業を中外製薬が担当し、診断薬事業をロシュ・ダイアグノスティックスが担当しています。

中外製薬は、日本ロシュとの合併以前には一般用医薬品も取り扱っていましたが、ライオンへ売却。これによりロシュは日本国内においても、医療用医薬品と診断薬に特化した事業内容となりました。「ロセフィン(セフェム系抗生物質)」や「マドパー(パーキンソン病治療薬)」などの長期収載品(13品目)は2017年に太陽ファルマに売却しており、近年の中外製薬は抗体医薬品(バイオ医薬品)の新薬開発に力を入れています。

中外製薬の国内・海外の売上高比率

中外製薬はオンコロジー領域における国内シェア第1位となっており、更なる市場拡大が期待できる抗体医薬品の分野でも、国内トップのシェアを誇ります。通常の医薬品に比べて再現・量産が難しい抗体医薬品の開発には高い技術力と大規模設備が欠かせませんが、その市場においてロシュの豊富な人材・技術・資金をフル活用できるのはロシュが持つ最大の強みといえます。

その強みをフルに活用した中外製薬は営業利益率でライバル他社を圧倒しています。国内の上場製薬企業の平均営業利益率は14%前後とされるなか、中外製薬は以下のグラフのように40%を超える年もあります。

中外製薬の営業利益率の推移

2021年の中外製薬の売上は9,998億円、営業利益は4,219億円。同社の業績を支えてきた「リツキサン」「ハーセプチン」は特許切れによるバイオシミラー(BS)の登場の影響で、売り上げは前年比でそれぞれ▲30%、▲38%と大幅減少。「アバスチン」も第一三共のBSとファイザーのBSが登場しましたが、分子標的薬市場では売り上げ首位をキープしています。「アバスチン」は新製品である「テセントリク」との併用による肝細胞がん治療での使用が増えており、売上は807億円(前年比0.7%減)と健闘しています。

現在はこの「テセントリク(国内売上高:662億円」をはじめ、コロナによる特殊要因でセールスが好調な「ロナプリーブ(774億円)」、日本で初めての国産抗体医薬品「アクテムラ(432億円)」、「ヘムライブラ(416億円)」、「アレセンサ(277億円)」、「エブリスディ(97億円:前年比646%増)」などが中外製薬の主力製品となっています。

近年の中外製薬の強みの一つとして強調されるのは、ロシュの販売ルートを利用した自社開発製品の海外販売です。一例としては「ヘムライブラ(血友病治療薬)」は、ロシュグループ全体で約3600億円を売り上げており、中外のロシュ向け輸出額も1100億円を超えています。

中外製薬の主力製品(売上順)
医薬品名 対象領域 売上高(21年12月期:単位は億円)
ヘムライブラ 血友病A 1,142
アクテムラ 関節リウマチ
新型コロナウイルス感染症
1,028
アバスチン がん 809
ロナプリーブ 新型コロナウイルス感染症 774
テセントリク がん 662
アレセンサ がん 501
パージェタ がん 322
エディロール 骨粗鬆症 223
カドサイラ がん 157

中外製薬の強み「抗体医薬品」をPRするCM動画(松坂桃李さん出演)

通常の医薬品はターゲットとなる病巣の細胞だけでなく周囲の正常な細胞にもダメージを与えてしまいます。中外製薬が市場をリードする「抗体医薬品」は異常な細胞だけを狙い撃ちにします。同社の主力製品であるアバスチンやアクテムラなどの医薬品が該当します。遺伝子組み換え技術などのバイオ技術で製造されるため「バイオ医薬品」とも言われます。価格が高価なのが唯一の難点です。

10年前の中外製薬:アバスチン、ゼローダ、タルセバ等のがん領域が伸長

インフルエンザ治療薬「タミフル(一般名:オセルタミビルリン酸塩)」は2008~2009年シーズンのインフルエンザの大流行の反動で、2009年度の762億円から2010年度は181億円へと減少しました。

抗IL-6受容体抗体の関節リウマチ治療薬「アクテムラ(一般名:トシリズマブ)」の輸出は38億円増加して127億円となりましたが、G-CSF製剤の白血球増加薬「ノイトロジン」の海外売り上げは170億円へと43億円減少しました。その結果、海外製品売上高は330億円と1.8%減少しました。

国内では、親会社ロシュから導入している「がん領域」のグローバル製品と「骨・関節領域」の関節リウマチ治療薬アクテムラが好調で、国内医療用医薬品の拡大に貢献しました。

がん領域では、抗VEGF抗体「アバスチン」、FU系代謝拮抗剤「ゼローダ」、EGFR阻害剤の肺がん治療薬「タルセバ」が伸長しました。アバスチンは2009年11月に肺がんの効能追加が承認され、売り上げが大きく増加しています。国内では、アメリカの承認が取り消された乳がん効能についても2011年9月に承引されました。

ゼローダは結腸・直腸がんについて「オキサリプラチン」との併用(XEROX療法)として2009年9月、胃がんについて2011年2月に追加承認されました。また、タルセバは非小細胞肺がん治療の全例登録調査が2009年中に終了し、2011年7月には膵がんの効能追加も承認されました。

抗HER2ヒト化モノクロナール抗体の乳がん治療薬「ハーセプチン」は2008年2月にアジュバント療法が追加承認され、売上高が拡大しました。2010年には薬価再算定を受けたことからいったんは減少しましたが、2011年3月には「HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃がん」が追加承認され、再び増加傾向にあります。

自社開発製品ではアクテムラが57億円増加して141億円となりました。関節リウマチ治療薬の領域では「レミケード(田辺三菱)」、「エンブレル(ファイザー、エーザイ)」に次ぐ3位の市場シェアを持ちますが、後から発売された「ヒュミラ(アボット、エーザイ)」が猛追しています。

2009年度まで中外製薬の最大製品だった自社開発の腎性貧血治療薬「エポジン」は400億円と前年比10%の減少となりました。同領域での競合品「ネスプ(協和発酵キリン)」に対抗する、4週間に1回投与製剤「ミルセラ(一般名:エポエチンベータ ペゴル)」を親会社のロシュから導入し、2011年7月から発売し、巻き返しを図っています。

2011年4月には自社開発の活性型ビタミンD3化合物の骨粗鬆症治療薬「エディロール」を発売しましたが、新薬開発のほとんど親会社のグローバル抗がん薬の適応拡大で、アバスチン、ゼローダ、ハーセプチンなどの適応拡大が申請段階にあります。

がん細胞に選択的に作用する分子標的薬

抗がん剤治療の様子

従来型の抗がん剤は、がん細胞が正常細胞よりも細胞分裂が活発で早い細胞周期による核酸の利用速度の違いだけに対して作用していました。

これらの抗がん剤は、がん細胞以外の分裂速度の速い細胞、すなわち骨髄中の幼若造血細胞、口腔粘膜細胞、消化管上皮細胞などに対しても作用するため、骨髄抑制(白血球減少、血小板減少)、消化器障害、脱毛などの副作用が発現しやすいという大きな弱点がありました。

一方、分子標的薬はがん細胞や重篤な疾患で特異的に発現している分子を標的とすることができることから、これまでの治療薬と比較してがん細胞に対してより選択的に作用し、副作用の発現を抑えることができるのが最大の特徴です。

分子標的薬は大きく分けると低分子化合物と抗体薬品があります。低分子化合物は標的分子の活性部位に結合し、その機能を阻害します。そのため標的分子が、がん細胞の増殖シグナルを伝達する役割を持っていると、この分子の機能を阻害することによって抗がん剤としての作用を発揮するのです。

現在発売されている分子標的薬の標的分子としては上皮成長因子(EFG)受容体や血管内皮成長因子(vEGF)受容体などのチロシンキナーゼ(TK)型受容体が代表であり、チロシンリン酸化が細胞の異常な増殖・分化のシグナル伝達経路を活性化することからチロシンリン酸化酵素を阻害することにより抗がん作用を示します。