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バイエル(世界18位):イグザレルト、アイリーアが堅調も特許切れが迫る

本社はドイツ

ヘルスケア(医療用医薬品、医療機器、動物薬)、クロップサイエンス(殺虫剤、殺菌剤、除草剤などの農薬)、マテリアルサイエンス(合成樹脂など)の3つの事業から構成されていたバイエルは、2015年にマテリアルサイエンスを「コベストロ」として分社化し、ライフサイエンスを中核事業とする企業に生まれ変わりました。

医療用医薬品の重点領域は、循環器・腎臓、オンコロジー、眼科、血液、婦人科など。ジェネリック医薬品が存在しない製品の売上割合は80%を超えているのがバイエルの強みの一つとなっています。

2014年にアメリカのメルクから一般用医薬品事業を1.4兆円で買収し、同事業を世界2位の規模に拡大したほか、2018年にはアメリカのバイオ化学メーカー「モンサント」を7兆円で買収して、クロップサイエンス部門の充実も図っています。その一方で2018年には、スキノレン(ニキビ治療薬)、フィナシア(ニキビ治療薬)、トラボゲン(真菌症治療薬)、 ネリゾナ(ステロイド外用薬)を含む皮膚科領域のグローバル事業をデンマークの皮膚疾患治療薬専門の製薬企業「レオファーマ(本社:デンマーク)」売却、翌2019年には動物用薬品事業をアメリカのエランコ社に売却するなど、重点領域であるオンコロジー、循環器・腎疾患、婦人科疾患への注力が進んでいます。

2020年のバイエルの売上は196億ドル。業績を支えているのは、最大の主力製品であるイグザレルト(経口抗凝固薬)、アイリーア(AMD:加齢性黄斑変性症の治療薬)、ヤーズフレックス(月経困難症治療薬の治療薬)、ミレーナ(月経困難症の治療薬)、ヴァイトラックビ(抗がん剤 一般名:ラロトレクチニブ)、コージネイト(血友病A治療薬)などです。

イグザレルトは日本国内における経口抗凝固薬の市場で第一三共のリクシアナに次ぐ売上2位、アイリーアは海外・国内ともに眼科用剤の市場で売上トップの製品ですが、2023年頃にどちらも特許切れを迎えます。

ただし、イグザレルトは2021年に小児の血栓塞栓症への適応追加が承認され、患者数の増加で今後の市場開拓が見込めます。またアイリーアに関しては、BS(バイオシミラー:バイオ後続品)の参入に備えて、2022年2月にバイエルホールディングスの子会社バイエル薬品販売を通じてバイオAG(オーソライズド・ジェネリック=先発医薬品メーカーから特許の許諾を得て製造する後発医薬品)の承認を取得しています。

「ヤーズフレックス」は、最長で120日間連続服用できるピル。不妊治療に係る効能が追加され、2022年4月から保険適用となるため、今後の大幅な売り上げ伸長が期待されています。

新薬開発のベンチャーに投資するベイヤーの投資部門「Leaps by Bayer」(動画)

オンコロジー領域における細胞・遺伝子治療などの画期的な新薬開発のブレークスルーは既存のメガファーマではなく、ベンチャー企業からもたらされることは少なくありません。そうしたライフサイエンスの分野で研究・開発を行う企業を選定し投資することで、アンメットメディカルニーズが高い疾患のニーズに応えようというのが、ベイヤーのインパクト投資部門「Leaps by Bayer」です。2022年から3年間で13億ユーロを投資します。

10年前のバイエル:イグザレルトの適応拡大で世界トップ50の製品を目指す

シェーリングAGの買収(2006年)により現在の最大製品であるインターフェロン製剤「ベタフェロン」や女性ホルモン製剤「ヤスミン」を獲得しました。その他では分子標的薬「ネクサバール」、血友病治療薬「コージネイト」などが医療用医薬品部門の売上を支えています。降圧薬「アダラート」、抗菌薬「シプロ」「アベロックス」などの一時代を築いた製品もありますが、現在のラインナップに世界トップ50に入る20億ドル製品は一つもありません。

ただし、大型化が期待できる新薬が近年相次いで承認されています。加齢黄斑変性症治療薬「アイリーア」は2011年にFDA(アメリカ食品医薬品局)が承認し、2012年には日本、ヨーロッパでも承認されました。同市場で先行する競合品の「ルセンティス」ロシュがアメリカで15億ドル、その他の国ではノバルティスファーマが21億ドルを売り上げており、2011年のグローバル市場で売上24位となっています。

さらに2012年にはマルチキナーゼ阻害剤「レゴラフェニブ」が転移性大腸がんを適応症としてFDA承認を取得しました。そして20億ドル製品に最も近いと期待されているのが抗血液凝固薬「イグザレルト」です。同剤は世界初のファクターXa阻害剤として2008年に承認されましたが、当初の適応症「整形外科手術後のVTE(静脈血栓塞栓症)発生抑制」の市場規模は小さいものでした。

その後2011年に、ワルファリンが半世紀にわたって大市場を形成してきた「SPAF(心房細動患者の脳卒中予防)」の効能を追加しました。ブリストル・マイヤーズファイザーの共同開発によるXa阻害剤「エリキュース」も同効能で承認され、先行するベーリンガー・インゲルハイムの直接トロンビン阻害剤「プラザキサ」も含めて抗血液凝固薬の市場におけるシェア争いが激化しています。

「イグザレルト」はより軽症のACS(急性冠症候群)の効能追加も目指していますが、2012年のFDAの初回申請でCRL(非承認通知)となり、2013年にも2回目のCRLとなりました。SPAFでは20mg錠1日1回の用法容量、ACSでは2.5mg錠1日2回として申請しています。

バイエルは2012年4月に日本人向けに低用量で開発した新規経口凝固薬の抗Xa剤「イグザレルト」の国内での販売を開始しました。同剤はワルファリンに代わる抗凝固薬として大型化が期待されている製品で、競合品としては日本ベーリンガーの直接トロンビン阻害剤「プラザキサ」があります。

しかし、プラザキサは禁忌患者に投与されるなどして死亡例が報告され、ブルーレター(安全性速報)が出されたことから、新規抗凝固薬における安全性をいかに確保するかが重要となりました。

イグザレルトでは、市販後調査に加えて、1万人を症例目標とした特定使用成績調査が行われています。またバイエルでは、外部医師らで構成される「適正使用委員会」社内に設置して添付文書の内容の周知徹底に努めています。

イグザレルトに続く抗Xa剤としては、ブリストル・マイヤーズとファイザーが共同開発した「エリキュース」も同年12月に承認されています。同剤は脳卒中発症の抑制と大出血発現率及び死亡率の低下では、ワルファリンに対する優越性が証明されており、今後、新規経口抗凝固薬の競合が激しくなることが予想されます。