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ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS:世界5位)はがん領域で存在感を高める

自社開発も好調

抗血小板薬「プラビックス」、抗精神病薬「エビリファイ」、高血圧治療薬「アバプロ」をはじめとする大型製品の導入実績が豊富なブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)。

抗HIV薬「レイアタッツ」、白血病治療薬「スプリセル」、B型肝炎治療薬「バラクルード」、抗リウマチ薬「オレンシア」など、自社開発製品も多く、承認された新薬数と研究開発費総額を比較して、グローバル製薬企業のなかで最大の研究開発効率を達成しています。

2019年には、血液がん領域で市場シェアを拡大し急成長を遂げたセルジーン(当時世界売上18位)を約8兆円で買収。この買収により抗がん剤の「レブラミド(対象:多発性骨髄腫)」や「ポマリスト(対象:多発性骨髄腫)」、多発性硬化症治療薬「オザニモド」などの有力製品を獲得しました。なかでもレブラミドは世界売上が100億ドルに届きそうな超大型薬です。さらにセルジーンを通じて、各種がん免疫療法の技術を獲得しました。

2022年には肺がん治療薬で有望なパイプラインを保有するバイオ医薬品メーカー「ターニング・ポイント・セラピューティクス」を買収。またドイツのバイオ医薬品メーカー「イマティクス」との提携を拡大し、免疫細胞ベースのがん治療薬を共同開発することを発表するなど、オンコロジー領域での存在感を急速に高めています。

かつては幅広い領域で研究開発を行っていたブリストル・マイヤーズですが、現在の重点領域はオンコロジーに絞っており、売り上げ収益の70%近くは「オプジーボ(小野薬品工業と共同開発)」、「ポマリスト」、「アブラキサン」、「スプリセル」などの抗がん剤となっています。これまで主力事業の一つだったHIV事業は重点領域の「選択と集中」のため、ヴィーブヘルスケア(ファイザーGSK塩野義製薬が出資するHIV専門の製薬企業)に1700億円で売却しました。

ただし、最大の主力製品である抗がん剤「レブラミド」の特許の一部が2022年に期限切れとなるため、ブリストル・マイヤーズはオンコロジー領域以外でも収益確保の動きを見せています。具体的な例では、2020年にアンメット・メディカル・ニーズ(患者のニーズはあるものの有効な治療法がない)、特に心血管領域の新薬開発に注力しているバイオ医薬品企業「マイオカーディア」を1.4兆円で買収しました。この買収で獲得したマバカムテンは、閉塞性肥大型心筋症治療のファーストラインになりえると期待されており、2022年にはFDA(アメリカ食品医薬品局)の承認を受け「Camzyos」という製品名で販売されました。

2020年の売り上げは425億ドルで世界売り上げでは前年度の9位から5位まで大幅に躍進しました。上記の抗がん剤のほか、セルジーン社から獲得した「レブラミド」、循環器領域の「エリキュース」、自己免疫領域では「オレンシア」が業績を支えています。またPD-1阻害薬「キイトルーダ」を巡るメルク(MSD)との係争が決着したため、2023年までは「キイトルーダ」の売り上げの一部がライセンス収入としてブリストル・マイヤーズに支払われます。

ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)の主力製品(売上順)
医薬品名 対象領域 売上高(21年3月期:単位は億ドル
レブラミド
(一般名:レナリドミド)
多発性骨髄腫 121
エリキュース (経口抗凝固薬) 92
オプジーボ
(一般名:ニボルマブ)
複数のがん 70
オレンシア 関節リウマチ 32
ポマリスト
(一般名:ポマリドミド)
多発性骨髄腫 31
スプリセル
(一般名:ダサチニブ)
慢性骨髄性白血病(CML) 21
ヤーボイ
(一般名:イピリムマブ)
複数のがん 17
アブラキサン
(一般名:パクリタキセル)
12
エムプリシティ
(一般名:エロツズマブ)
多発性骨髄腫 4

10年前のブリストル・マイヤーズ スクイブはプラビックスとアバプロの2本柱

2011年度の連結売上高は212億ドルで前年比で9%の増加となりました。好調な業績を牽引する主力製品は「プラビックス」で、ヨーロッパを中心に販売を行う開発元サノフィの売上28億ドルと合計した売上は99億ドルとなり、ファイザーのコレステロール低下薬「リピトール」を抜いて世界売上1位となりました。

2012年に「プラビックス」と「アバプロ」が特許終了となったため、同社は2012年問題(パテント・クリフ)の影響が最も大きい製薬企業とされていますが、抗体・分子標的の高分子医薬品や新規薬理の低分子医薬品の開発に積極的に取り組んできた成果が出ています。

2011年3月に承認された抗体医薬のメラノーマ(悪性黒色腫)治療薬「エルボイ」が3.6億ドルの売上となりました。2012年mつにファイザーと共同開発したファクターXa阻害剤の抗血液凝固薬「エリキュース」は日米の初回申請で市場規模の大きいSPAF(心房細動患者の虚血性脳卒中の発症抑制)効能が承認されました。

また、アストラゼネカと共同開発している世界初となるSGLT-2阻害剤の糖尿病治療薬「Forxiga」はヨーロッパで承認を取得しました。糖尿病領域では急成長のDPP-4阻害薬「オングリザ」を有するほか、2012年7月にはGLP-1アナログ製剤を開発した米バイオベンチャーのアミリン・ファーマシューティカルズを買収しました。

ファースト・イン・クラスのC型肝炎治療薬として注目されるNS5A阻害剤「ダクラタスビル」がフェーズ3の段階にあります。プロテアーゼ阻害剤と「リパビリン」を含めて、3剤の経口剤を併用する治療体系が確立できればインターフェロンを禁忌とする患者層が治療に復帰できると期待されています。

「エルボイ」に続く抗体医薬としては、小野薬品から導入した抗PD-1抗体の抗がん剤「ニボルマブ」、抗CS1抗体の多発性骨髄腫治療薬「エロツズマブ」がフェーズ3段階に進んでいます。

現在の抗体医薬品は、完全ヒト型抗体の作製が可能になったことに伴って、中和抗体産生に関する問題はほぼクリアーされ、現在は抗原の選択と治療効果をいかに高めるかが焦点となっています。

また、目的に応じた薬剤コンジュゲート抗体やサイトカイン融合抗体などが開発され、さらに、組織移行性を高めるために抗体の断片化などの新しい技術が試みられています。

がんやリウマチなど従来型の薬剤では治療効果が十分に得ることができなかった疾患において、治療効果を示し、なおかつ副作用も少ないという点で抗体医薬品が注目されており、現在でもがん領域を中心に多くの医薬品が開発中となっています。