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アッヴィ(AbbVie:世界3位)は主力製品のヒュミラ、イムブルビカが好調

パテントクリフが迫る

アメリカの製薬企業アボット・ラボラトリーズから)から新薬事業を継承する形で2013年に分離独立したアッヴィ(AbbVie)は、企業収益の全てが医療用医薬品となっています。

アッヴィの重点領域は、自己免疫疾患、血液腫瘍、ニューロサイエンス、美容関連となっており、なかでもグローバル医薬品市場における最大の主力製品は、毎年約20億ドル(2,400~2,600億円)売上が伸びている自己免疫疾患治療薬「ヒュミラ(一般名:アダリムマブ)」です。ヒュミラの売上は年間2兆円を突破しており、「2020年に世界で最も売れている薬」となっています(独立調査会社の調べ)。

2019年までこの領域で最大のシェアを獲得していた田辺三菱製薬の「レミケード」が欧米ではあまり好まれない静注製剤であるのに対し、「2020年世界で最も売れた薬」とされるヒュミラには薬剤重点済みのシリンジ、自己注射用のペンが用意されているという利便性、適応症の承認数が多い(=患者数が多い)という優位性があります。

ヒュミラのバイオシミラー(BS:バイオ後続品)承認を取得したアムジェンとの特許係争は、アムジェンから特許料を受け取る代わりに同社のバイオシミラーの市場参入を認める(欧州市場は2018年、アメリカ市場は2023年から)ことで和解決着しました。日本国内では2022年末時点で、協和キリン富士フイルムバイオロジクスおよびマイランEPD、持田製薬、第一三共がヒュミラのバイオシミラーを販売しています。適応症の承認数では先発品のヒュミラが優位にありますが、今後競争は激化すると予測されます。

2015年、アッヴィはオンコロジー領域や免疫疾患領域の医薬品開発を行う「ファーマサイクリックス(Pharmacyclics)」を約2.5兆円で買収しました。この買収でアッヴィが獲得した抗がん剤「インブルビカ(一般名:イブルチニブ)」は様々な血液がんへ適応拡大を受けており、約36億ドルの年間売上が見込めるブロックバスターです。

翌2016年には、やはりオンコロジー領域で治療薬の開発を行う「ステムセントルクス(Stemcentrx)」を約6300億円で買収。同社はがんの幹細胞を狙い撃ちする新しいタイプの治療薬候補「ロバルピツズマブ・テシリン(通称:Rova-T)」を保有しており、前年に傘下におさめたファーマサイクリックス社とあわせてオンコロジー領域での製品パイプラインの多様化を図っています。

2019年、アッヴィはシワ消しやリフトアップで知られる注射剤「ボトックス」などの美容医療、中枢神経系領域、コンタクトレンズなどのアイケア製品を専門とするアイルランドのヘルスケア企業「アラガン(Allergan)」を6.7兆円で買収しました。ヒュミラが欧州市場で既に特許期間が満了しており、安価なバイオシミラーが参入、さらには同社の売上2位のイムブルビカも2027年に特許切れとなるため、ポートフォリオの多角化を狙った買収と考えられています。

2020年のアッヴィの売上はアラガン買収効果もあり、前年比38%の458億ドルとなりました。ヒュミラの売上は198億ドルで医薬品の売り上げの約50%を1剤で叩きだしています。次いで多いのが53億ドルを売り上げた白血病治療薬「イムブルビカ(一般名:イブルチニブ)」です。そのほか「リンヴォック(関節リウマチなどの治療薬)」や「スキリージ(乾癬などの治療薬)」など自己免疫疾患領域でのヒュミラの後継品が好調です。

リンヴォックとスキリージは適応拡大を申請中で、今後も売り上げの伸長しピーク時の売上は共に5000億円~と期待されています。アラガン買収で獲得した「ボトックス」の売上は14億ドル。初年度(2018年)に34億ドルを売り上げた「マヴィレット(C型肝炎治療薬)」は2年続けて減少しましたが、持続的ウイルス陰性化(SVR)が高く、全てのC型肝炎ウイルスの遺伝子型に有効、投与期間も短いという優位性によって現在でも圧倒的なシェアを維持しています。

アッヴィ(AbbVie)の主力製品(売上順)
医薬品名 対象領域 売上高(21年3月期:単位は億ドル)
ヒュミラ 自己免疫疾患 198
イムブルビカ 慢性リンパ性白血病 53
マヴィレット C型肝炎 18
スキリージ 自己免疫疾患 16
ボトックス 美容関連(シワ治療) 14
ベネクレクスタ 慢性リンパ性白血病 13
クレオン 慢性膵炎 11
ルプロン(日本国内の製品名:リュープリンとして武田薬品工業が販売) がん 8
リンヴォック 自己免疫疾患 7

アッヴィのオンコロジー部門のスタッフが語る創薬への思い(動画)

前述のとおり同社が現在注力しているのはオンコロジー領域における創薬ですが、なかでも注力しているのが毎年110万人が新たに罹患している「血液がん」です。肉親をがんで亡くしているアッヴィ社の副社長Mohamed Zaki氏、オンコロジー創薬部門の部長Steve Davidsen氏、オンコロジー領域のトランスレーショナルリサーチ(TR)のヘッドAnahita Bhathena氏が、創薬にかける思い、同社が開発したbcl-2阻害薬「ベネクレクスタ(一般名:ベネトクラクス)」がもたらしたもの、忘れられない患者さんを語っています。